- 1934年アメリカ映画
- 監督:フランク・キャプラ
- 撮影:ジョセフ・ウォーカー
- 主演:クラーク・ゲーブル/クローデット・コルベール
プレストン・スタージェスの「パームビーチ・ストーリー」を観てコメディエンヌ、クローデット・コルベールにすっかり魅せられた僕でしたが、彼女の名前を口にすると必ず上げられるのがこの映画でした。僕はまだ一度も観たことがなかったので口惜しい思いをしていました。
チラシを見るとこの映画は、アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞を受賞と書いてあって、うーん凄いな。コルベールは芸域の広い女優さんだし日本語の題名からもシリアスな映画だと思い込んでいたのですが(あ、監督がキャプラか)、最上級のラブ・コメディでした。僕は十二分に満足しました。
大金持ちの父親から結婚を反対されてコルベールが恋人に会うためにいきなり船上から海に飛び込むシーンが冒頭にあって、コルベールの気の強さが印象付けられます。
映画はマイアミの海からコルベールがニューヨークの恋人に会いに行くロード・ムーヴィーという形になっています。その道中でコルベールは新聞記者クラーク・ゲーブルに出会うのです。
出会いの時二人は反発し合いますが、ニューヨーク行きの夜行バスの中でゲーブルの服にすがりついて安心しきって眠るコルベールから、コルベールが最初からゲーブルに惹かれていたことが分かって微笑ましくなります。
大雨でバスが止まり二人はモーテルの同じ部屋に泊まることになります。
ベットとベットの間に紐を吊るして毛布を掛けるゲーブルを観ながら、ああロン・ハワードの「遥かなる大地」のあのシーンはこの映画へのオマージュなんだなあと思いました。このシーンは音の使い方が秀逸です。振り続ける雨の音が互いに異性を意識する二人の心を浮き彫りにしていました。最後の二人が別れなければならない夜のモーテルのシーンでも音の使い方が印象的でした。現実音だけにして二人の空虚な心を象徴していました。
雨が上がった爽やかな朝、ゲーブルはベッドの上のコルベールに「早く起きないと放り出すぞ」とかなり乱暴ですが、外のシャワーを浴びて部屋に帰ってくるコルベールを確認してから卵を割ってスクランブル・エッグを作る様子からゲーブルのコルベールに対する細やかな愛情が伝わってきて、キャプラって上手いなあと感心してしまいます。
この映画は大好きなシーンがいっぱいあるのですが、バスの乗客が一体となって「空中ブランコ乗り」の歌を歌うシーンの話をすればにこにこしてしまう映画好きは少なくないのではないでしょうか?
月光がきらめく川をコルベールを肩に担いでゲーブルが渡るシーンも素敵だしなあ。ゲーブルがヒッチハイク講釈をするシーンなんかユーモアとウィットがあって本当に好きです。
ニューヨークの恋人との結婚式。ヴァージン・ロードを歩くコルベールと父親。
お前はばかだ。裏に車が停めてある。そしてコルベールは"I will"と言う代りに走り去るのでした。
これは・・・。あ、言わなくても分かりますよね。
1996/10/15