2016/03/02

愛情萬歳


  • 1994年台湾映画
  • 監督:ツァイ・ミンリャン
  • 撮影:リャオ・ペンロン
  • 主演:ヤン・クイメイ/リー・カンション/チェン・チャオロン


 「登場人物たちのよるべない孤独な瞬間を観客も一緒に耐えてもらいたかった」という、ツァイ・ミンリャン監督の言葉が、全てを物語っています。

 ウォン・カーウァイ監督は、「恋する惑星」の登場人物たちを評して、孤独と折り合いをつける術を知っていると言いましたが、この作品を見ると、彼らは、たんに自分が、孤独であることを、誤魔化していたに過ぎないんじゃないか、そう思えるほど、「愛情萬歳」の登場人物たちは、自分の孤独と真摯に向かい合っています。

 「青春神話」に続いて、リー・カンションが、出演しています。次回作の「河の流れ」にも、出演するそうです。行き詰まったときには、フランソワ・トリフォーの「大人は判ってくれない」を見るという、ミンリャン監督ですが、彼とカンションの関係は、まさに、トリュフォーとジャン=ピエール・レオーの関係のようです。ミンリャン監督が、カンションに初めて出会ったとき、カンションは、賭博機が置いてある、ゲーム・センターで、警官の見張り番をしていたそうです。

 最後に、ヤン・クイメイが、公園で泣くシーンが、圧倒的です。  ヤン・クイメイは、ミンリャン監督に、なぜ「メイ」は、泣くのかと、質問したそうです。ミンリャン監督は、ただ泣けばいいんだと答えて、あのシーンになったようです。

 荒れ果てた公園を通って、ベンチに座るメイ。突然泣きだす。泣けるだけ泣く、メイ。やがて、涙が収まり、しっかりした顔つきをするメイ。毅然とした顔つきが少し崩れて、涙がうっすらと浮かぶ。でも、今度は、顔つきの中に、どこか優しさを感じさせる。ああ、メイは、孤独に耐えることができたんだなあ、そう思ったとき、画面は、突然真っ暗になり、映画は、終わります。

1995/08/13