2016/03/02

パリでかくれんぼ


  • 1995年フランス映画
  • 監督:ジャック・リヴェット 脚本:パスカル・ボニツェール
  • 撮影:クリストフ・ポロック
  • 主演:ナタリー・リシャール/マリアンヌ・ドニクール/ロランス・コート


 リヴェット風ミュージカル・コメディ。
 ナタリー・リシャールが会員制クラブ「バック・ステージ」で印象的な踊りを見せるシーンではカメラの後ろでジャック・リヴェットも踊っていたそうで、そんなエピソードもうんうんそうだろなと首肯ける軽快で楽しい映画でした。

 ナタリー・リシャール演じるニノンは善と悪の境界で軽々と生きる妖精。マリアンヌ・ドニクール演じるルイーズは喧嘩とポーカーにめっぽう強い現代的眠りの森の美女。ロランス・コート演じるイダは謎を追う個性の強い女の子。
 僕は「セリーヌとジュリーは船でゆく」を思い浮かべました。

 ラスト・シーンは通り雨でしっとりと濡れたパリの舗道をイダが走り去るシーンでした。最後に残るのは静かで理知的なパリ。そうこの映画はパリが主役でした。

 当初予定されたラスト・シーンはニノンがローラ・スケートで走り去るシーンだったそうで、僕はこちらの方が好きです。そのラスト・シーンだったら静けさでなく軽快さが最後に心に残ったでしょう。赤を中心とした色の使い方も心を浮き浮きとさせる使い方だったので画面の奥に消えていくローラ・スケートの二ノンはぜひ観たかったなあ。

 踊りのシーンでは僕はなんといってもアトリエでナタリーとロランが踊るシーンが印象に残りました。二人の背後で溶接の火花が散ったときは息を呑みました。それほど美しい瞬間でした。

 あと好きなのは公園で「かわいい」と言われてむくれる内気なリュシアンをルイーズがミュージカル風に宥めるシーンです。それならニヒル?野性的?と言葉を重ねて最後にルイーズが「優しさの中に陰がある」と言うとリュシアンはにっこりと微笑むのでした。

 音は地下室のあの不気味で神秘的な音が耳に残りました。作った音なのでしょうか。それとも実際にあの地下室で鳴っていた音なのでしょうか。久しぶりに登場人物の一人となり得る音に出会いました。

 この映画は最後にローラ・スケートの二ノンが走り去る映画として僕の記憶に残りそうです。

1996/12/15