2016/03/01

吸血ギャング団『赤い暗号帳』『幽霊』


  • 1915/1916年フランス映画
  • 監督:ルイ・フイヤード
  • 主演:ミュジドラ/ジャン・アイム/エドゥアール・マテ


 ゴーモン映画の100年。きょうはルイ・フイヤード監督の連続活劇「吸血ギャング団」の第3話「赤い暗号帳」1915と第4話「幽霊」1916を見てきました。

 この連続活劇は犯罪を主題にしているということで批判もされたようですが、シュール・レアリズムの中心人物であったルイ・アラゴンとアンドレ・ブルトンは「この作品にこそ真実を見るべきだ」と高く評価しました。この連続活劇の背景には第1次世界大戦の勃発によって混乱したパリがあります。

 「赤い暗号帳」で、ギャング団の首領と悪女が野井戸から隠れ家に入るシーンがありましたが、そこでは野外撮影による場面とスタジオ撮影による場面が巧みに繋ぎ合わされていました。初期の頃からフイヤードは盛んにスタジオ撮影の中に野外撮影の部分を頻繁に挿入しましたが、これはフイヤードがイギリス映画の影響を受けていたからです。当時のイギリス映画の特徴はドキュメンタリーとリアリズムでした。きょうの作品には見られませんでしたが、特にSFXをスタジオから屋外へと飛び出させたことはフイヤードの功績でしょう。

 この連続活劇での僕の一番のお気に入りキャラクターはマザメットです。

 第1話では主人公である新聞記者フィリップ・ゲランドからギャング団に関する資料を盗みだそうとして、たちまち見抜かれます。マザメットはゲランドに子供たちの写真を見せて養育費が必要だったんですと慈悲を乞い、ゲランドは彼を許します。
 第2話ではギャング団の一員となっていて偶然にもギャング団にロープでぐるぐる巻にされたゲランドに出会います。呆れるゲランド。また君かい。今度はマザメットは制服を着た子供たちの写真を見せます。学費が必要だったんです。ともかく第1話での恩義があるマザメットはゲランドを助けます。
 第3話ではパリ市の勤勉な葬儀屋となっていて、ゲランドを助けます。
 第4話では完全にゲランドの助手となり、ギャング団逮捕に情熱を燃やすのでした。

 スマートで残虐な犯罪集団の首領。その片腕の美貌の悪女。彼らを追う美青年の新聞記者。新聞記者のすこし間の抜けた助手。連続活劇になくてはならないキャラクターが全て揃っていて当時の観客が夢中になったのも充分に頷けます。

※以上の文章を書くに当たっては、ジョルジュ・サドゥール著「世界映画全史」と東京国立フィルムセンター発行NFCカレンダーを参考にしました。

1995/11/22