2016/03/01

魅せられて


  • 1996年イギリス/フランス/イタリア映画
  • 監督:ベルナルド・ベルトルッチ
  • 撮影:ダリウス・コンジ
  • 主演:リブ・タイラー/ジェレミー・アイアンズ/シニード・キューザック


 この映画のパーティーの部分でバックに流れた"SUPERSTITION"を聴きながら書いています。ただし演じるのはスティーヴィー・ワンダーではなくベック、ボガード&アピスです。

 タイトル・ロールはビデオカメラで撮影されたルーシーの映像です。真っ直ぐにレンズを見るルーシー。その映像は飛行機、列車がたまたま一緒だった男がルーシーに気づかれずに撮ったものであることが明らかになります。あげるよとフィルムを残してそのまま去る男。謎が生まれ映画は始まります。

 冒頭のカメラワークは流麗で華麗。近景、少し変な表現ですが中景遠景が淀みなく繋がっていてその技に感嘆してしまいます。
 そうそう撮影があのダリウス・コンディなのです。僕は「デリカテッセン」「ロスト・チルドレン」での映像が印象に残っていますが、「セブン」で彼の名前を覚えたという人もいるでしょう。彼のカメラワークを観るためだけでもこの映画は観る価値があると思います。

 ルーシーの母親の友人を演じるシニード・キューザックはジェレミー・アイアンズの実際の奥さんだそうで、キューザックがアイアンズの身体に触れるシーンではなんとも言えない優しい情感が感じられてなるほどなあと思ったことでした。

 ジャン・コクトーの映画で有名なジャン・マレーが出演しています。ジャン・コクトーは幻想的な映画を撮った人です。そして「オズの魔法使い」もセリフの中で登場します。冒頭の謎、ジャン・マレー、「オズの魔法使い」これらの3つが映画に神秘性を与えています。ルーシーが処女であることもキーになりそうです。

 ルーシーの父親は蛇殺しの男です。蛇は人間をそそのかし楽園から去らせた存在です。そんなことを考え始めるとこの映画は一筋縄ではいかないなあということに気づきます。やっぱりベルトリッチの映画です。

 ルーシーから恋をしたことがあるのと聞かれて、たった一度だけと答える死を目前にひかえた初老のアレックス。
 死へ赴くとき、君が見れただけでも幸せだったとルーシーに呟くアレックス。

 僕はアレックスの少年のような恋が心に残りました。

※"There's no place like home!"、「オズの魔法使い」でのドロシーのセリフです。このセリフを思い浮かべながらこの映画を観たらまた違った面が見えてくるかもしれません。

1996/08/21