2016/03/02

死と処女


  • 1995年アメリカ映画
  • 監督:ロマン・ポランスキー
  • 撮影:トニーノ・デッリ・コッリ
  • 主演:シガニー・ウィーバー/ベン・キングズレー/スチュアート・ウィルソン


 鬼才ロマン・ポランスキー+女ハリソン・フォード、シガニー・ウィーバーの魅力につられて、観に行きました。ベン・キングズレーも出演していて、パリ、ニューヨーク、英国それぞれの個性が、ぶつかりあい、火花を飛び散らしていました。

 原作が、アリエル・ドーフマンの戯曲ということもあって、きわめて演劇的な映画でした。人里離れた、海側の家。3人の登場人物。これだけのもので、映画は進みます。逆に言えば、俳優の力量が、如実に現われるということです。

 3人とも、素晴らしい演技を見せてくれましたが、やっぱり、ベン・キングズレーが、頭1つ抜きんでいたかな。最初の登場の時から、人格者である面と、暗い悪魔的な面を見せてくれました。

 ウィーバーは、タフネスぶりを発揮し、被害者であるのに、加害者そこのけの、凶暴性を見せます。

 感心したのは、ウィーバーの夫役の、スチュアート・ウィルソンです。拷問という繋がりを持つ、ウィーバーとキングズレーの間に立って、うろたえながらも、冷静に問題を解決しようとし、映画に重みを与えていました。

 それにしても、ウィーバーは、迫力がありました。キングズレーを'Mother Fucker'と罵るときの、口調と表情は、ちょっと忘れることができません。そして、ウィーバーが自分が受けた拷問を夫に語るシーンも、真に迫っていて、素晴らしいものでした。

 しかし、なんといっても、圧巻なのは、キングズレーが自分の罪を告白するシーンです。きわめて善良で、人格者である彼が、どうして非道な行為に陥ったが、説得的に語られ、改めて、自分の中に潜んでいる「悪魔」を感じさせてくれたのでした。

  権力、エロス、サド、マゾ、死、暴力。いろんな主題が詰まっていて、いかようにも語れるのでしょうが、僕は、なにより、3人の俳優の力技に、感服しました。

1995/06/05