- 1951年アメリカ映画
- 監督:アルフレッド・ヒッチコック
- 撮影:Robert Burks
- 主演:ファーリー・グレンジャー/ロバート・ウォーカー
サンドラ・ブロック主演の「ザ・インターネット」に関して「見知らぬ乗客」を観て観にいけばさらに面白いはずとほかのフォーラムに書いてあったこともあって、ぜひ観たかった作品です。
なるほど「ザ・インターネット」の作品から少し浮いた感じのした回転木馬のシーンはヒッチコックへのオマージュだったんですね。ところであの猛回転する木馬の下に人が潜り込むシーンはトリックなしの撮影だったそうで、ヒッチコックはあんな危険な撮影は二度としないと文句を言ったそうです。
ヒッチコックがダブルベースを持って登場するシーンがありますが、このシーンはこの作品にも出演している娘のパトリシアが監督しています。
主人公の妻を演じるローラ・エリオットに何故か惹かれるものがあって、調べてみたのですが事務員とかスチュワーデスとか脇役ばかり演じた人のようです。主人公の恋人を演じるルース・ローマンはリタ・ヘイワースの代表作「ギルダ」(ほら、「ショーシャンクの空に」で刑務所で上映されていた映画です)にも顔を見せています。
ローラ・エリオットの眼鏡には本当に度が入っていて、もしエリオットが近視でないならあんな強烈に度が入った眼鏡じゃ目まいがして吐いただろうな心配してしまいました。エリオットの眼鏡にライターの炎が映るところは事件の後パトリシアの眼鏡で繰り返されロバート・ウォーカーが常軌を逸していくのを見事に表現していました。
この作品の圧巻は遊園地でのシーンでしょう。ウォーカーが子供の風船をタバコの火で割るところ。力試しをするシーンでウォーカーがエリオットに両手を開いて見せるところ。舟に乗り込むウォーカーの顔が下からの照明で照らされるところ。トンネルで人影が争うようにもつれるところ。殺意が確実に伝わってきて、さすがヒッチコック!そして事の後、人に親切にするウォーカーを見せ、ウォーカーの異常性を浮き彫りにしていました。
脚本にレイモンド・チャンドラーの名前があるのも気になるところですが、実際にはチェンチ・オーモンドがほとんど書いたようです。
テニスの試合のシーンはまさにヒッチコックのサスペンス理論の見事な例証ですね。
僕たちは主人公のグレンジャーに生き延びるための時間がないことを知っているから相手の選手が試合の間に水を飲むところを観ても、時間がなくなるとハラハラしてしまいます。
ということであなたも観ましょう「見知らぬ乗客」。公開が楽しみな「12 Monkeys」にも「見知らぬ乗客」でのシーンが引用されているようですよ。
1996/04/02