- 1940年アメリカ映画
- 監督:アルフレッド・ヒッチコック
- 撮影:George Barnes
- 主演:ローレンス・オリヴィエ/ジョーン・フォンテーン
この作品は、ヒッチコックの記念すべきハリウッド映画第1作です。1940年の作品です。アカデミー賞を受賞しています。ヒッチコック自身はオスカーを逃しています。ヒロインを演じるのはジョン・フォンテーンですが、最初20名以上の女優がテストされその中にはヴィヴィアン・リーの名前もありました。この作品で主演しているローレンス・オリヴィエは、当時リーの恋人でもあったので、ヴィヴィアン・リーを強く押したようです。オリヴィエはフォンテーンにかなり強く当たったようで、オリヴィエを作品中のデンヴァースと見做せばまるでこの映画そのままですね。
ローレンス・オリヴィエに関してはロンドンでシェークスピア俳優として成功してからの経歴については書く必要はないでしょう。
ジョン・フォンテーンについて紹介すると、1917年生まれで、なんと東京生れです。フィルムデビューは1935年。近年では1994年にTVに王女役で出演しています。息の長い女優さんですね。姉妹も女優ですが、どうも犬猿の仲だったようです。フィッツジェラルド原作の「夜はやさし」等に出演しています。
この作品のキーポイントとなるデンヴァースを見事に演じるのは、ジュディス・アンダーソン。この人も息の長い女優でしたが、近年亡くなっています。「熱いトタン屋根の上の猫」等に出演しています。
海中深く身を潜め、城の中に軽やかな足音を響かせるモンスター。最後まで姿を見せることなく空を紅く染める炎の中に滅びていくモンスター。謹厳な男に'the most beautiful creature'と言わせるモンスター。死に面しても毅然としているモンスター。最後の最後まで人を破滅に誘うモンスター。僕が出会ったモンスターの中で最も魅力的なモンスターでした。
冒頭のシーンの美しさはどうやって説明したらいいのでしょうか。光と影が作りだす映像は神秘的で神々しくさえあります。僕はこれより美しい映像を外に知りません。撮影はジョージ・バーネス(Barnes)。当然のようにオスカーを獲得しています。
語り口にも惹かれます。けっして急がずじっくりと、しかし無駄なことは語らずに効果的に語られます。
実はこの映画を初めて観て、これは僕が出会った中で最高の映画ではないかと興奮している状態で、感想は書けそうもないのです。
1996/03/15