2016/02/29

楽園の瑕


  • 1994年香港映画
  • 監督:ウォン・カーウァイ
  • 撮影:クルストファー・ドイル
  • 主演:レスリー・チャン/レオン・カーファイ/トニー・レオン


 いろんな情報があって最初は「欲望の翼」の続編かなと思っていたら、剣戟映画だという話があってそうなのかと納得して実際に観てみたら僕にとってはやっぱり「欲望の翼」の続編でした。

 話は時代劇です。東牙と西毒と呼ばれている二人の剣士が主人公の映画です。
 でもこの映画は次のような切ないシーンが中心になっています。

 海辺の家。潮騒。窓から海を眺めるマギー・チャン。私は勝ったと思っていた。ある日私は鏡の中に敗者の顔を見た。私は一番美しいときに最愛の人を失った・・・。

 トニー・レオンって最近の「シクロ」にしろかっこいい役が多いなと思っていたらこの映画でもかっこいいのでした。

 トニー・レオンは放浪の剣士です。レオンには最愛の妻がいます。放浪の旅に出たのは妻が親友を愛してしまったからです。レオンは失明しかかっています。レオンは失明する前に故郷の桃の花を見たいと願い、旅費を得るために賞金稼ぎの仕事を斡旋している西毒ことレスリー・チャンに仕事を依頼します。馬賊に挑むレオン。陽光を雲が隠しレオンはなにも見えなくなります。首を切られ倒れるレオン。
 後日レスリー・チャンは桃の花が見たくなりレオンの故郷に行きます。桃の花はどこにもありません。レオンの妻はレオンの死を知り嘆きます。レスリー・チャンはレオンの故郷を去りながら初めて気づくのでした。桃花とはレオンの妻の名前だったことに。

 純で切ない恋愛感情がこの映画の中心になっていました。

 「欲望の翼」。夜明けの光。列車。銃弾を受けて息を引き取ろうとしているレスリー・チャン。肝心なことは忘れない。そう「欲望の翼」は記憶をテーマにした映画でした。

 この映画の最後マギー・チャンの死を知ったレスリー・チャンはこう呟くのでした。忘れようとすればますます忘れられなくなる。忘れようと思うのなら心に刻みつけることだ。その言葉を聴きながら僕の中でこの映画と「欲望の翼」とは重なり合って一つになったのでした。

1996/10/04