2016/02/24

デカローグ 第3話、第4話


  • 1988年ポーランドTVドラマ
  • 監督:クシシュトフ・キェシロフスキ
  • 主演(第3話):Daniel Olbrychski, Maria Pakulnis, Joanna Szczepowska
  • 主演(第4話):Adrianna Biedrzyńska, Janusz Gajos, Adam Hanuszkiewicz

 「セブン」にしようか、「デカローグ」にしようかと迷って、朝起きたときの気分で「デカローグ」にして観てきました。七つの大罪、十戒とどちらもキリスト教に関係があるなあと思って第3話を観ていたら、第3話はある意味では「セブン」よりも恐い話でした。

第3話『あるクリスマスイヴに関する物語』


 第3話のテーマ色は赤。車内を占領する赤い光。雪に覆われた広場に置かれる赤い車。その車の中に入れられる赤のマフラー。顔の半分を赤い血で染めた男。この男の死を喜ぶ男もいるわ。それはこの男を憎んでいる人間よ。助手席の女はハンドルに手をかけ、車を赤い光に包まれた木に衝突させる。雪でしっとりと濡れた街中の夜道を疾走する車。追跡するパトカーの赤い光。

 クリスマス・イブに女の失踪した夫を探す男と女。観客は女が嘘を吐いていることを知っている。なぜ?なぜこの狂気がその影を時々落とす女は嘘を吐くのか?男と女の手に当てられるカミソリの鋭い刃。酔漢を丸裸にして冷水を浴びせるサディスト。あなたと夫が死ぬことを夢見たわ。あなたはトラックに撥ねられ舌を飛び出させて死んでいる。一気に高まる緊張感。

 がらんとした駅の構内。中央には大きなクリスマス・ツリー。駅の時計が朝の7時を示す。大どんでん返し。

 このドラマは優しく終わるのでした。

第4話『ある父と娘に関する物語』


 第4話のテーマ色は白。娘は白いコートに身を包んで、森を抜けて川側に腰を下ろす。川では男が白いボートを白いオールで漕いでいる。娘の左耳には白銀色のイヤリング。娘は禁断の扉を開ける鍵となる茶色の手紙を持っている。娘が封を開くと白の封筒が出てくる。
 エレクトラ・コンプレックスをテーマにした作品ですが、清純さがあるのは白という色故でしょう。この作品における白は、同じくエレクトラ・コンプレックスをテーマにした小津安二郎の「晩春」のラスト・シーンの鎌倉由比ヶ浜の爽やかな海を思い浮かべさせます。

 至福の時を過ごす父娘。しかし、2人はどうしようもない真実に気付く。あるいは立ち向かわざるを得ない。その時の2人の切なさに心を打たれます。
 2人は父娘に戻るのか、それとも男と女になるのか。決断は観客に投げられてドラマは終わります。

1996/01/30