- 1939年フランス映画
- 監督/脚本:ジャン・ルノワール
- 撮影:ジャン・バシュレ
- 主演:マルセル・ダリオ/ノラ・グレゴール
NFCルノワール特集です。
ルノワールの生誕百年の時の特集でも観たのですが、もう一度観直してみようと思い行ってきました。
最初観たときは、狩猟の場面で妻が夫の浮気を知り、それが引き金となり全体が一体となって一挙に破局に向かって進み始めますが、その破局へ向かっての進行のテンションの高さに圧倒されました。
そして銃弾を受け倒れたうさぎが画面の中央にクロース・アップされ、体をけいれんさせながら死んでいくのが破局の伏線になっていたのも心に残りました。恋に盲目になった男はうさぎのように撃ち殺されるのです。
撮影がジャン・バシュレです。初期から中期にかけてのルノワール映画のカメラでは一番好きな人です。ラジオの剥き出しの背面の武骨なクロース・アップからフランス上流階級の豪華で洗練された室内のロング・ショットにスムーズに移って行くとこなんか最高です。「ランジュ氏の犯罪」でも感じたのですが、この人の移動撮影は名人芸と言っていいくらい巧みです。滑らかで淀みがありません。この辺りは実際にご覧ください。
音と音楽の使い方も印象的でした。
ルノワール自身が演じるオクターブと親友のアンドレが野原で言い争う場面で小鳥ののどかな鳴声が聞こえてきます。オクターブは気を静めアンドレと仲直りします。
次の場面は室内の場面ですがウグイスの鳴声を出す自動演奏器が二つの場面を繋いでいました。上手いなあと思いました。
音楽では召使たちの食事の場面ですね。召使たちの活気があるというよりはかしましい会話とラジオから流れてくる軽快な音楽が一体となって楽しい場面になっていました。あくまでも現実音を基本にしながら音楽をポイントポイントで使っていてルノワール監督の趣味の良さが窺えます。この辺りはヴィム・ヴェンダース監督にもう一度勉強して欲しいところです。
エロスが上流階級、庶民階級の二つの層で並行的に考察されます。恋とは幻想の交換であり皮膚の接触であると気取っていた人たちもエロスに引き摺られ暴力へ死へと向かいます。
そして最後の破局と大団円ではルノワールの政治感覚の鋭さを感じたのですが、まだうまく言葉にできないのでこれは別の機会に書きます。
1996/11/29