2016/02/13

ラ・マルセイエーズ


  • 1937年フランス映画
  • 監督/脚本:ジャン・ルノワール
  • 撮影:ジャン=セルジュ・ブルゴワン
  • 主演:ピエール・ルノワール/リズ・ドラマール


 第1条 人は、出生および生存において自由および平等の権利を有する。社会的の不平等は、公共のための外作ることはできない。
 第2条 すべての政治的結合の目的は、人の天賦かつ不可譲の権利を保持することにある。これらの権利は、自由、所有権、安全および圧制にたいする反抗である。

 上記した二つの条項はフランス革命の人権宣言のものです。これらの条項からもフランス革命が自由を理想とした革命であったことは窺えるでしょう。
 このフランス革命をテーマにした映画の最後の場面でこんなセリフが聞けます。
 俺たちにとって自由はいわば身分違いの相手だった。その相手を俺たちは恋人にすることができた。俺たちはまだこの恋人に慣れていない。俺たちは自由をまだ妻にすることはできない。いつか俺たちはこの恋人を扱えるようになるだろう。俺たちは自由を伴侶にすることができるようになるだろう。

 自由讃歌の映画「ラ・マルセイエーズ」の製作資金は前売り券を売って集められたそうです。つまり「ラ・マルセイエーズ」は資本家のお金によって作られた映画ではなく普通の人々のお金で作られた映画なのです。そんなところにもルノワールの心意気が感じられます。

 ルノワールが素晴らしいのはそんなふうに自由を讚えながらも圧制する側を単なる悪として描いていないことです。
 ルイ十六世の描き方なんてとても生き生きとしていて、惹かれてしまいます。見事な並木道を歩いて王宮から逃げ去るルイ十六世が落ち葉を見て今年は早いなと呟くところなんか威厳さえありました。

 そしてルノワールがけっして楽しさやユーモアを忘れていないことにも心を打たれます。どんなにりっぱな主義主張のある映画でも楽しさやユーモアがなければ、なんの魅力もありません。というか僕は楽しさやユーモアがない映画は信頼できない気がするのです。そこにあるのは偏狭な人間観でしょう。

 国家の重大事に接しながら食べる楽しみを優先させてしまうルイ十六世を描くルノワールはリアリストですが、同時にそのルイ十六世を見るルノワールの視線には暖かみがあります。そんなところに人はルノワールの魅力を感じるのだと思います。

 トマトのことを「愛のリンゴ」と言うのだということを初めて知りました。
 トマト好きの僕は嬉しくなりました。

1996/12/17