- 1941年アメリカ映画
- 監督:ジャン・ルノワール 脚本:ダドリー・ニコルズ
- 撮影:ペヴェレル・マーリー
- 主演:ダナ・アンドリュース/アン・バクスター/ウォルター・ヒューストン
NFCルノワール特集です。
ルノワール生誕百年の特集の時にも観ましたから今回で二回目です。
「田舎の小さな町」「耐える主人公」「最後の勝利」とアメリカの映画監督D・W・グリフィスがこよなく愛したテーマが主旋律となっています。この映画はルノワールのハリウッド第一作です。ルノワールはアメリカでの第一作を作るにあたって映画手法の確立者D・W・グリフィスに敬意を表明したのでしょう。
この映画には上記した他に様々なテーマがあります。
青年の成長の物語。社会から離れたところに住んでいる「仙人」の話。正義を貫こうとしたために命を奪われそうになる青年の話からは、正義と社会というテーマとアメリカの民主制の持っている恐ろしさが窺えます。恋がちょっとした行き違いで憎しみに変わる話。シンデレラのバージョン。嶽窟王のバージョン。若い妻を迎えたために嫉妬に苦しめられる老人の話。
とりわけ魅力的なのは父親と息子というテーマです。このテーマは「荒れ地」1929でも叔父と甥という関係でしたが印象深く扱われていました。
主人公の青年は恋人とのキスよりも犬の方が大切で子供のようです。なによりも正義を愛し、恋敵にも公正であろうとします。父親の方は狼藉者にも"Stop,sir"と呼びかけるほど紳士的でかつ頑固な人間です。そんな二人の関係が魅力的でした。
沼地に行ったまま行方不明になる息子。息子を探しだすことができずにがっくりと肩を落とし家に戻る父親。自分の角笛を暖炉の上に置こうとすると息子の角笛がある。その瞬間の父親の嬉しそうな顔には感動してしまいます。背後から息子の声。でも振り向いた父親は息子に厳しい態度を取ります。喜んでもらえると思った息子は反発し家を飛びだします。
ベッドに寝ている息子とその息子を看病している父親。父親は息子を死地から救いだし家に連れ戻したのです。まだ反発している息子に父親は「息子だからお前を助けた。ここはお前の家だ。ゆっくりしていけ」と優しく言います。息子は大好きな父親の愛情を感じにっこり笑って父親に手を差し出すのでした。
あ、いいなあと思いました。
心を暖かくしながら、十二月にしては暖かい銀座の街を歩きました。
僕もジェリーのように喜びを表すために月光の中で踊れればいいなあと思いました。
1996/12/10