- 1946年アメリカ映画
- 監督:ジャン・ルノワール 脚本:ジャン・ルノワール
- 撮影:ハリー・ウィルド
- 出演:ジョーン・ベネット/ロバート・ライアン/チャールズ・ピックフォード
ジョーン・ベネットを観たのはフリッツ・ラングの「飾窓の女」でが始めてでした。
夜。街の通りで犯罪学の教授が声をかけられる。見ればと胸を突かれる程美しい女性。それから教授は犯罪の深みにはまっていき、遂には自らの死を待つ羽目になってしまう。時が刻まれる音。そして運命の時間・・・。
スリラー映画の教科書とも言える「飾窓の女」を支えていたのはジョーン・ベネットの美しさでした。
この映画ではそんなジョーン・ベネットの美しさが最大の魅力になっています。
こんなふうに書いてもルノワールに失礼になることはないでしょう。ルノワール特集の舞台挨拶でフランソワーズ・アルヌールはルノワールの素晴らしさとして「女性の美しさを描き続けた」ことを挙げていました。
初老の画家とその妻であるモデルの美女と青年が主要な登場人物になります。こう書くと青年とルノワール自身を重ねる人がいるのではないでしょうか。
初老の画家はルノワールの父親であるオーギュスト・ルノワールで、初老の画家の妻であるモデルの美女はオーギュスト・ルノワールのモデルで後にジャン・ルノワールの妻となったアンドレと見ることも可能でしょう。
盲目になっても自分の描いた絵に執着する画家は、晩年中風になり震える手に筆を縛りつけて絵を描いたというオーギュスト・ルノワールの話を思い起こさせます。
オーギュスト・ルノワールの最大の傑作はその息子ジャン・ルノワールだとはよく言われることですが、もちろんジャン・ルノワールにとって父親のオーギュスト・ルノワールは大きな存在です。
それは「荒れ地」「スワンプ・ウォーター」等の父と息子をテーマにした映画からも分かります。
この映画をそれらと同系列の映画だと見做すならば、そこにある父と息子の関係はまさに悪夢です。
ルノワールにとって父親はどんな存在だったのか?
観終わって改めて考えました。
1996/12/24