2016/02/26

夏物語


  • 1996年フランス映画
  • 監督:エリック・ロメール
  • 撮影:Diane Baratier
  • 主演:メルヴィル・プポー/アマンダ・ラングレ/グウェナエル・シモン


 地下鉄を出ると曇り空で雨がぱらついていました。映画館の窓口で受付を済ませて青山ブックセンターに行きました。エリック・ロメールの短編集が置いてあったので購入しました。

 導入部のけっして急がないゆったりした語り口が印象に残りました。海岸のリゾート地ディナールに向かい到着した青年の映像が説明なしに淡々と続きます。海の輝きと夜の保養地の騒めき。青年がつま弾くギターの音。一人レストランに座る青年。このレストランで青年はウェイトレスをやっている女性と出会い、物語は始まります。

 ガスパールが泊る友人の部屋には帆船の絵が掛けられてます。マルゴが働くレストランには帆船の模型が置かれてます。エリック・ロメール自身が作った「海賊の娘」という歌が歌われます。最後にガスパールは「マルゴを残して帆を揚げ船出しよう・・・」という歌と共に船で去っていきます。そしてガスパールが泊る友人の部屋には"LA MER"と背表紙に印刷された本があります。
 ここにはあきらかにイメージの一貫性があります。このイメージの一貫性が映画を支えています。

 この映画にあるのはエロスと道徳というロメールの映画ではお馴染みのテーマです。僕は「O侯爵夫人」を思い起こしました。ガスパールは最後にエロスでなく道徳を選びます。その時ガスパールは自分が本当に愛しているのはマルゴであることに気づきます。しかしガスパールとマルゴの愛はガスパールが道徳を選んだことに基づいているので(ガスパールがエロスを選ぶような人間ならマルゴはガスパールから離れるでしょう)、ガスパールはマルゴと別れざるを得ません。

 朝の桟橋で手を上げて別れの挨拶をするマルゴ。同じく手を上げて別れの挨拶をする船の中のガスパール。「帆を揚げ船出しよう・・・」。
 まだ22歳のガスパールは自分でも言うように30歳になったら花開くのでしょう。

1996/08/24