2016/02/12

騎馬試合


  • 1928年フランス映画
  • 監督:ジャン・ルノワール 脚本:A・デュピュイ=マズュエル
  • 主演:アルド・ナディ/ジャッキー・モニエ

※写真はジャン・ルノワール

 NFCジャン・ルノワール特集です。

 上映時間二時間以上の大作です。映画史的なことを書くと映画の上映時間が伸び始めたのはフランスのフィルム・ダール社が制作した文芸映画「ギーズ公の暗殺」1908からのことです。
 さらにこの映画はコスチューム映画ですが、野外撮影も積極的になされています。コスチューム映画をスタジオから野外に解き放ったのはイタリアのアンブロージオ社が制作した「擲弾兵ロラン」1910です。
 そんな知識を持った上で観るのもまた楽しいと思います。

 カメラ・ワークが素晴らしいと思いました。冒頭の馬上の剣の試合。疾走する馬を捉えたロング・ショット、馬上の騎士を下から捉えたクロース・ショット、馬上で剣を交える騎士を俯瞰で捉えたショット、それらのショットを組合わせてダイナミックな映像を作っていました。

 王の母親が登場するシーンも印象的でした。カメラはまず子犬に乳をやっている床の犬を捉えます。それからカメラはゆっくりと上方に向けられます。王の母親の顔が捉えられるとカメラは今度はゆっくりと後方に引き、宮廷の様子が明らかになります。この辺りの映画的手法はとても洗練されたものでした。

 教会で愛を誓う若い二人を捉えたカメラ・ワークも忘れられません。祭壇に向かう二人を後方から固定で捉えたショット。次のショットでは祭壇に立った二人を正面下からのクロースで捉えます。溶暗。画面の手前に馬の顔と馬の轡を持つ手を配置し画面の奥には教会の出口が配置されます。その構図の中で教会から出てくる二人が捉えられます。

 僕は悪の主人公が人を殺して血塗られた剣を愛人の豊かな黒髪で拭うシーンが心に残りました。そうした後主人公は激しく愛人を抱きしめるのでした。そして最後に愛人は主人公を裏切って主人公に死をもたらすのです。
 僕はルノワール的主題を強く感じました。

1996/11/09