2016/02/12

『チャールストン』『マッチ売りの少女』

チャールストン』
  • 1926年フランス映画
  • 監督:ジャン・ルノワール 脚本:ピエール・レストランゲス
  • 撮影:ジャン・バシュレ
  • 主演:カトリーヌ・ヘスリング/ジョニー・ハギンズ

 「チャールストン」は今回の特集で観るのを楽しみにしていた映画です。

 冒頭に登場するのは球状の飛行物体。飛行物体はアフリカから北上する。飛行物体を操縦するのは黒人の紳士。エッフェル塔は途中から折れてしまっている。どうもヨーロッパは滅びてしまったらしい。崩壊したパリに降り立った黒人紳士は女性の白人野蛮人に出会う。女性の超能力も持っている白人野蛮人は黒人にチャールストンを教える。すっかり意気投合した二人は球状の飛行物体に乗ってパリを去っていく。

 監督エド・ウッドあるいはジョージ・ロメロあるいはウィリアム・キャッスルとクレジットされるのが相応しいようなB級映画の香りが誇り高く香ってくる映画です。ジャン・ルノワールがこんな映画を撮っていたというのはとても嬉しいことです。

 ストーリーなんてどうでもよく、この映画にあるのはひたすらチャールストンを踊っているカトリーヌ・ヘスリングです。
 カトリーヌ・ヘスリングの踊りを背後からスローモーションで捉えた映像にまず驚かされます。撮影のジャン・バシュレはさらにコマ落としでも踊りを捉えます。
  観ているうちにこの映画の中心にあるのは映画を発明して初めて動きを捉えることができるようになった人類(少し大げさですが)の根本的喜びではないかと感じました。

 エリック・ロメールは自分が一本だけ後世のために映画を残すならば、「ジャン・ルノワールの小劇場」を残すだろうと言いましたが、僕ならこの「チャールストン」を残すだろうなと思いました。そこでは映画を撮るという行為の底にある根源的喜びが奔放に表現されています。

マッチ売りの少女』

  • 1927年フランス映画
  • 監督:ジャン・ルノワール 脚本:ピエール・レストランゲス
  • 撮影:ジャン・バシュレ
  • 主演:カトリーヌ・ヘスリング/ジャン・ストルム


 「マッチ売りの少女」は詩情溢れる映画です。
 最後の方にあるシーンは譬えようもなく美しいです。

 命を無くした少女を岩場に横たえる死神。死神の服についた長い髪の少女の髪の毛が風に運ばれて少女の墓標に張りつく。墓標は薔薇の木に変わる。薔薇の木に白バラが咲く。白バラが開き花びらが少女の顔に落ちる。白バラの花びらはそのまま雪となり少女は幸福な表情を浮かべて路上に冷たく横たわっている。

1997/01/30