- 1935年イギリス映画
- 監督:アルフレッド・ヒッチコック
- 主演:ロバート・ドーナット/ルーシー・マンハイム/マデリーン・キャロル
この映画はアメリカでは年に5、6回は再上映されているそうです。この映画はヒッチコックの作品の中でも古典と呼べるものでしょう。
ヒッチコックはサスペンスを持続させるには現実とファンタジーが必要だと信じていたそうです。聖書の真ん中にめりこんでいた弾丸はそのファンタジーの最もいい例でしょう。
手のクローズアップが印象的に使われていました。背中をナイフで刺されたルーシー・マンハイムのスコットランドの地図を握る手とロバート・ドーナットの手のクローズアップ。サスペンスが一気に高まります。そしてラストシーンのドーナットとマデリン・キャロルの繋がれる手のクローズアップ。このショットには解放と安らぎがあります。「汚名」でもイングリッド・バーグマンの鍵を握る手のクローズアップが印象的でした。どうもヒッチコックは手のクローズアップに思い入れがあるようです。「サボタージュ」で一世一代の名演技をしたのに映っていたのは手のクローズアップだけだったと主演女優のシルヴィア・シドニーが文句を言ったということもあったようです。
脚本はチャールズ・ベネット。「暗殺者の家」(1934)「間諜最後の日」(1936)「サボタージュ」(1936)「第3の逃亡者」(1937)とこの時期のヒッチコック映画の常連脚本家です。ハリウッド時代のヒッチコックのためにも書いています。「海外特派員」(1940)です。
字幕って難しいなと改めて思いました。記憶屋の最後のセリフは「覚えるのにひどく苦労したので一度言ってみたかったんだ。・・・・・。これでもう忘れることができるよ」というものでした。記憶屋の職人気質と同時にユーモアも感じられるセリフだったのですが、字幕では残念ながらその辺のニュアンスが伝わってきませんでした。
1996/05/14