2016/02/17

ダイヤルMを廻せ!


  • 1954年アメリカ映画
  • 監督:アルフレッド・ヒッチコック
  • 撮影:Robert Burks
  • 主演:レイ・ミランド/グレース・ケリー/ジョン・ウィリアムズ


 1954年の作品です。立体映画として撮られましたが、立体映画として公開されたのはヒッチコックの死後1980年のことです。ところでそのヒッチコックはこの映画ではどこで顔を出しているのでしょうか。あの同窓会の写真ですね。左端に写っています。僕は気付きませんでした。

 脚本はフレデリック・ノット。オードリー・ヘプバーンの「暗くなるまで待って」の原作となった戯曲もこの人ですね。ヘプバーンといえば、彼女に関係のある人が2人この映画には出演しています。まずなかなか鋭いところを見せてくれる警部を演じたジョン・ウィリアムズ。「麗しのサブリナ」ではヘプバーンの父親役でした。あと1人は電話ボックスにいた老紳士役のサム・ハリス。この人は「マイ・フェア・レディ」にパーティの客の1人として出ています(ここまでチェックしてしまうと、少しマニアックですが)。
 損な役割の悪役スワンを演じたアンソニー・ドーソンは007シリーズの「Dr.No」でも魅力的な悪役を演じています。

 タイトル・ロールでは電話機のダイヤルのところに書かれた文字「M」の鮮やかな赤がとりわけ印象的でした。冒頭で登場するグレース・ケリー演じるマーゴットは赤のドレス。恋人のマークは臙脂のネクタイ。壁には赤い花の絵が掛けられている。この辺りの色彩のセンスは好きです。
 そしてマーゴットの着る服は冒頭の明るさを失い、物語が進みマーゴットが真実を知り始めるに従って徐々に暗いものになっていきます。

 マーゴットの恋人であり推理小説家であるマークが大活躍するのかと思っていたら、最後に鮮やかな活躍を見せるのは警部でした。トニーがドアが開かず、通りに引き返すときのサスペンスはヒッチコック一流のものですね。
 そして完全犯罪の手口をまず明らかにして、それが実行段階で様々な障害に会い、そのことが観客をどきどきさせるというのもなかなか憎い演出です。マーゴットの「映画を観に行くの」というなんでもない言葉に観客はどきりとしてしまうのです。

1996/04/09