2016/02/27

女の園


  • 1954年松竹大船
  • 監督/脚本:木下恵介 原作:阿部知二『人工庭園』
  • 撮影:楠田浩之
  • 主演:高峰秀子/岸恵子/高峰三枝子


 いま東銀座松竹セントラル3では、「松竹百年映画祭」と銘うって旧作100本を上映中です。9月23日から始まった企画ですが、まだ1本も見ていなかったので、見ていきました。上映の30分前に、はやかなりの人達が入っていました。年配の人達が多かったです。映画を通して昔を懐かしむのでしょうか。

 監督は、木下恵介。出演者は、高峰秀子、岸恵子、高峰三枝子、田村高廣等です。製作は、1954年。2時間強の大作です。

 資本家の経済的援助の上に成り立っている全寮制の女子大学を舞台にした話です。当然そこでは資本家にとって都合のいいことのみが教えられ、学問の自由、人間としての自由は認められません。遂に女子大生達は、自由を求めて立ち上がり、学生の自治を学校側に求めるという話です。頭でっかちな監督が撮ったならば、かなり詰まらない映画になりそうですが、木下監督は血も肉もある人間を丹念に撮って、見応えのある作品にしています。力作です。

 高峰三枝子が断然光っています。彼女の役どころは、寮の舎監です。彼女の上品な美貌が、そのまま冷酷さ・残酷さになっていて、適役でした。最近見た敵役の中では、最高の敵役でした。嫣然と笑って、補導係の男性教官を意のままに操るところ、反抗した生徒の刑罰に軽重をつけることによって、生徒達の分裂を計ってにっこり笑うところ、形勢不利と見るや、嘘泣きで切り抜けるところ等、敵役の鏡でした。

 人間って結局、自分の思うように生きているようでも、時代に動かされて生きているんだな。お釈迦さまの手の中で暴れる孫悟空にしか過ぎないのだな。そんなことさえ感じさせてくれる、なかなか良い作品でした。

1995/10/18