2016/02/27

殺陣師段平


  • 1950年東横映画
  • 監督:マキノ雅弘 脚本:黒澤明
  • 主演:月形竜之介/山田五十鈴/市川右太衛門


 いま、東京国立フィルムセンターでは、山田五十鈴の特集をやっています。

 「殺陣師段平」には、監督をマキノ雅弘、脚本を黒澤明、新国劇の殺陣師、段平役を月形竜之介、新国劇の沢田正二郎役を市川右太衛門と少しでも日本映画に愛情を持っている人にとっては、思わず溜息が出てしまう、素晴らしい人物たちが、関わっています。といういことで、場内はかなり混んでいました。山田五十鈴は段平の女房、おきく役です。

 橋の欄干の上で、酔ってとんぼをきってみせる、お茶目な段平。いやいや連れ添って8年と憎まれ口をきく、剽軽なおきく。段平は、髪結いの亭主です。

 段平に殺陣師の仕事が就いたと聞いて、涙を浮かべて喜ぶ、おきく。落胆した段平に、お酔いなはれとお酒を差し出すおきく。段平が心配してはいけないと自分の病気を隠すおきく。いったんは、おきくの身体を心配して、東京行をとり止める、段平。でも、やっぱり殺陣師の仕事が恋しくて、旅支度をする、段平。その段平を見て、と胸をつかれる、おきく。そこには、おきくの段平に対する想いが凝縮されていて、改めて、山田五十鈴は凄いなあと思いました。本当は段平に自分の側にいて欲しいのに、気張りいやと気丈に段平を送り出すおきく。そして、降り頻る雪の中に見える、「忌」の文字。

 結局、山田五十鈴の演技が、一番心に残りました。

1995/09/12