- 1949年アメリカ映画 2/3NFC
- 監督:ハワード・ホークス 脚本:チャールズ・レデラー
- 撮影:ノーバート・ブロディン 美術:ライル・ウィーラー
- 出演:ケーリー・グラント/アン・シェリダン/マリオン・マーシャル
僕が観たホークス作品から判断する限り、ホークスのコメディ映画は男性と女性の会話が魅力の中心になっている。
その会話においては女性は男性と全く対等で、ウィットに富んだ言葉が小気味良くキャッチ・ボールされ、時には火花を散らす。こんな風に書いていくと、すぐにプレストン・スタージェスのコークスクリュー・コメディ映画が思い起こされる。それでスタージェスの影響、或いは一世を風靡したコークスクリュー・コメディの影響をホークスが受けたように見えるが、僕の感じ、あくまで感じで甚だ頼りないのだが、男性と女性との活気に充ちた会話というのは、ハワード・ホークスという監督の資質が生んだように思われる。
コメディの核になっているのは、男性が書類上花嫁になることから発生する珍騒動だが、それはあくまで核に留まるのであって、コメディの魅力を生むものではない。それならばこの映画のコメディ映画としての輝きは前半から中盤にあると言えるだろう。そこでは喧嘩まがいの会話が燦然と輝きを発している。男性と女性の位置関係は、例えば女性がバイクを運転し、男性がサイド・カーの座席に乗るというシュチュエーションに典型的に現われているように、むしろ女性の方が高い位置にいる。それは後半の男性が書類上花嫁になるという事態の予告でもあるが、その位置関係は男性と女性の会話に、女性が男性と対等であることを保証することによって、エネルギーを与えている。
演技ではケーリー・グラントのホテルの一室での演技が印象深い。図らずも部屋に閉じ込められたグラントは椅子で眠るはめになるのだが、どうしても目の前にくる自分の手が気になってしまう。そこでのグラントの演技はなんとも言えずコミカルで観る者を惹き付ける。このグラントの演技は後半のストリーの展開の予告にもなっていて、なるほどなあとニヤリともさせられる。
2000/02/03