2016/02/29

リスボン物語


  • 1994年ドイツ映画
  • 監督:ヴィム・ヴェンダース
  • 主演:リュディガー・フォーグラー/パトリック・ボーショー/マノエル・ド・オリヴェイラ


 映画生誕100年に、最も相応しい作品。

 無声映画時代から、第1線で、映画を撮り続けてきた、マノエル・ド・オリヴェイラ監督が、全てのものは、流れ去る。セルロイドに固着されたイメージだけが、真実だと、息遣いも生々しく、重苦しく語りますが、セピア色のフィルムの中では、チャーリー歩きをしてみせたりと、思いっきりお茶目で、楽しませてくれます。そのお茶目ぶりが、主人公の、録音技師の「映画(ムービング・ピクチャー)は、100年立った今も、人々を感動(ムービング)させる力を持っている」という言葉を信じさせてくれます。

 手回しカメラで撮られた、セピア色のリスボンの街が、とても生き生きとして、感動します。音付きで、あの映像を見てみたいなあと思いました。
 録音というか、音にも感動しました。音の中から、リスボンの街が立ち上ってきて、嬉しくなってしまいました。都会の持つ「現実音」の発見は、多分、ヌーベル・ヴァーグの手柄だと思いますが、その成果の1つがここにあります。

 お金儲けの為でない、純粋な映像を求めて、ビデオにこだわる映画監督は、「夢の涯てまでも」の頃の、ヴィム・ヴェンダース監督自身の戯画でしょうか。あの作品の持つ、重苦しさを、この作品もまた、引き摺っていますが、同時に、軽やかさも、あります。最後のシーンは、録音技師と映画監督が、喜々として、映画を撮影するシーンで終わります。ああ、ヴェンダースは、軽快なフットワークを手に入れたのだなあと感じました。

 これからの時代は、「軽やかさ」が、大切になるのかもしれない。そんなことも、考えさせてくれたのでした。

1995/08/26