- 1936年アメリカ映画 1/14NFC
- 監督:ハワード・ホークス 脚本:ジェーン・マーフィン
- 撮影:グレッグ・トーランド 美術:リチャード・デイ
- 出演:エドワード・アーノルド/フランシス・ファーマー/ウォルター・ブレナン
様々な愛がメロディーを奏で、切なくもあれば美しくもあるハーモニーを作り出す。時折入る不協和音もそのハーモニーの切なさと美しさを際立たせる。この映画は一人の男、強さについての映画でもあるが、僕は愛の映画として心を打たれた。
立身出世のためには結婚も利用することを厭わない男が、一人の女に出会い一目で恋に陥る。暗い過去を持つ女は男を利用することしか考えていない。その女も男の誠実な優しさに触れ、男を愛す。世界に対する不信が深ければ深かっただけの深さで男を愛する。
しかし男は立身出世のために長く生き過ぎた。男は立身出世のための結婚を選び、女を捨てる。男は心から愛する女に二度と会わない決心をする。それが男の自分自身に対する罰なのだ。男は女の死に目にも行かない。長く抑えられた恋心。
そして男は女の娘に出会う。女に生き写しの娘。男が恋に陥るのを誰が責められよう。
その恋がこの映画を貫く中心的愛になるが、その愛に様々な愛が伴奏される。僕は男が立身出世のために結婚した女性の愛に心を動かされた。男が徹底的に打ちのめされた時、心から男を気遣い、叶わぬ夢もあると慰めるのだ。そこには男に対する静かで確かな愛がある。
でも本当に心を打つのは男が捨てた女の愛かもしれない。女は男との出会いの時を人生で最も幸福な時間だったと大切にしてその長くない一生を終えるのだ。
こんなふうに書いていくと大仰なメロドラマだと誤解されそうだが、この映画の魅力はユーモアだ。ユーモアが深い愛を生み出す。それこそがこの映画の最も感動的な点かもしれない。
2000/01/14