2016/02/16

紳士は金髪がお好き


  • 1953年アメリカ映画 1/15NFC
  • 監督:ハワード・ホークス 脚本:チャールズ・レデラー
  • 撮影:ハリー・J・ワイルド 音楽:ジュールズ・スタイン
  • 出演:マリリン・モンロー/ジェーン・ラッセル/チャールズ・コバーン


 片田舎から都会に出てきた二人の女性。二人はショー・ガールをやっている。二人がキャバレーで働いているのは貧しさ故だろう。でも二人は暗くない。本物の明るさを持っている。
 それは二人がほとんど無一文でパリのホテルから放り出されたシーンに最も良く表れている。夜のパリでカフェに立ち寄った二人には一杯のコーヒーを注文するお金しかないけれど、二人は落ち込まない。二人はそんな自分たちの状態を歌にして歌う。その歌は楽しい。二人は自分たちを客観的に見ることのできるユーモアの精神を持っている。
 安部公房がアメリカという国が持っているエネルギーの源泉はユーモアなのだと書いていたが、まさにそうなのだ。安部公房が記したことが、このシーンには見事に表現されていると言っても、誇張にはならないだろう。僕はこのパリの場末のカフェのシーンが一番好きだ。

 そして最後に披露されるマリリン・モンローの人生哲学。そこでは現世的夢が明るく確信を持って肯定される。彼女の人生哲学こそアメリカという国を魅力的にしているものだと、記しておこう。

 最後のシーンはよくよく考えてみると凄いシーンかもしれない。純愛、愛のための愛と、打算的な愛、お金のため、裕福な暮らしのための愛が、同列に置かれ同じ輝きを一瞬だが発する。それはたぶんマリリン・モンローという稀有な女優の力が可能にしている。僕たちはお金を純愛と同じ素晴らしさを持ったものだとほんの束の間だが信じる。

2000/01/15