- 1942年日本映画 9/24NFC
- 監督:マキノ雅弘 脚本:小国英雄
- 撮影:山崎一雄 音楽:鈴木静一
- 出演:長谷川一夫/山田五十鈴/榎本健一
ベルさんはやっぱり素敵だなあと見蕩れていました。
ちゃんと観せるべき芸があるのが魅力です。それは長谷川一夫にしても榎本健一にしても言えることで「待って居た男」は観終わった後、「ああ、面白かった」という言葉が自然に口から出て来るような映画でしたが、その言葉は話の面白さ故に出てくるというよりはこれら三人をはじめ役者たちの芸が楽しめるものだったから出てくるものでした。
おしどり目明(刑事)が登場するシーンでのベルさんと長谷川一夫のやり取りが最高です。
長谷川一夫はほとんど画面に登場しません。オフで「うん、うん」言うだけです。ベルさんが演じるのは気性のはっきりしたおかみさんで、亭主の長谷川一夫にぽんぽんと話しかけ、「うん」という亭主の気のない返事が返ってくる度に表情を次々に変えていくのが本当に面白く画面に見入ってしまいました。このシーンだけで二人がけんか仲良しであることが伝わってきます。
ベルさんは、コメディエンヌとしても最高だなあ。
昔の人はよかったなあと本当に羨ましく思いました。
いまは芸を楽しませてくれる役者さんはほとんどいません。
といって話が面白くないとうわけではけっしてありません。なにしろ脚本が小国英雄なのですから。今風にストーリーを少し紹介するとこうです。
リゾート地にある格式のあるホテル。そこで奇怪な事件が持ち上がる。たまたまそのホテルに都会でも評判の青年刑事が若妻と訪れていた。しかし保養に来ている青年刑事はまるで昼行灯で役に立ちそうもない。
気性がはっきりし行動的な若妻が事件解決に立ち上がる。若妻は電光石火の働きで犯人を突き止めたかに見えたが・・・。
面白そうでしょう?
青年刑事と若妻のけんか仲良し的な面がこの映画にテンポを与え、同時に映画をほのぼのと観ていて気持ちのいいものにしていました。
1997/09/24