- 1937年フランス映画
- 監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
- 主演:ジャン・ギャバン/ミレーユ・バラン
いま、銀座シャンゼリゼで開催されている「大いなるフランスの遺産」特集の中の1本、「望郷」を見てきました。
冒頭に、75周年シャルル・ジョルダン・シネマコレクションとあって、ロビーには、リタ・ヘイワースの写真と、彼女がジョルダンに特注した、靴の写真も飾ってありました。上品で、セクシーな靴で、彼女には、ピッタリだなあと思いました。
そう言えば、この作品の監督、ジュリアン・デュヴィヴィエは、ヘイワースとヘンリー・フォンダが共演した、「Tales of Manhattan」1944年も撮っているのでした。
「望郷」1937年を見たのは、これが初めてです。かまやつひろしが、カッコいいアルバム「ゴロワーズ」で、ジャン・ギャバンのことを歌っていて、ぜひ見なくてはと思っていた作品です。原題は、「ペペ・ル・モコ」。邦題が、「望郷」です。見終わった後、この邦題が、いかに秀逸かに気付きます。
ジャン・ギャバンは、本当にいい男だなと、見惚れていました。空の酒瓶を手に取って、俺と同じように空っぽだと、と呟くところなんか、カッコいいという言葉しかありません。ギャバンは、パリ生まれですが、彼の演じる、ペペも、パリに生まれ、パリをこよなく愛する男です。ミレーユ・バランと、パリの地名を挙げる場面に、それが如実に現われていました。ペペは犯罪者で、アルジェリアの迷路のような場所、カスバに逃げ込んでいますが、パリを象徴するバランに出会うことによって、パリへの思いをかき立てられ、無謀にも、安全なガスバを抜け出し、パリへ脱出しようとします。カスバは、ペペを守ってもくれますが、同時に、ペペを閉じ込める檻でもあります。ペペにとっては、パリは、自由そのものなのです。自由を求めて、船に乗り込む、ペペ。だから、最後に警察に捉えられたとき、束縛を意味する牢獄よりは、死を選ぶのでしょう。
ペペの「ギャビー」という叫びが、船の汽笛にかき消されるとき、「男の美学」の全てがありました。
1995/05/22