2016/03/08

憎しみ


  • 1995年フランス映画
  • 監督:マチュー・カソヴィッツ
  • 撮影:ジョルジュ・デアン
  • 主演:ヴァンサン・カッセル/ユベール・クンデ/サイード・タグマウイ


 ジョディ・フォスターがこの映画を観て感動し、この映画をアメリカで一般公開しようとしているとチラシで紹介されていましたが、そうさせるだけのものがこの映画にはありました。

 結末は救いのないものでしたが、久々に観た偽善のないストレートで気持ちいい青春映画でした。
 ユーモアもあって本当にこんな映画は好きだなあ。
 少年とトイレの老紳士のタランティーノ的お喋りもあって、タランティーノファンの皆さんは必見です。そう言えば「パルプ・フィクション」は徹底的にトイレに拘ってみせた作品でしたね。

 パリ郊外のスラム地域の暴動のシーンから始まります。流れるのはボブ・マーリーの'BURNIN' AND LOOTIN''。ジャマイカのゴミゴミして騒がしく殺気立った首都キングストンから生まれたレゲエはこの暴動シーンにぴったりでした。

 タイトルロールが終わっても、'BURNIN' AND LOOTIN''は遠くで鳴り続けます。焼け残ったビルの中でサンドバックを叩く重いパンチの音。団地に響くバイクの音。主人公の3人の青年たちは 'CR'さ、いや'YZ'だよとバイクの音に耳を澄まします。音が印象的でした。

 ボブ・マーリーのポスター。
 東京オリンピックで黒の手袋をした拳を高々と挙げている表彰台の黒人選手のポスター。
 'ELVIS SHOT JFK'と書かれたTシャツ。
 S&W44の銃弾を受けた衝撃で窓ガラスから飛び出すパトロール中の警官。

 それらはユダヤ系のヴィンス、アラブ系のサイード、アフリカ系のユベールという3人の青年の置かれている状況を見事に表現していました。

 僕が気に入ったのは、夜のパリのビルの屋上に3人が昇るシーンです。

 3人の正面にはエッフェル塔。あの光を消してやるぜ。指を鳴らす音。エッフェル塔の光は消えない。映画と現実は違うさ。映画の中じゃお袋も美人だしな。笑い声。3人は屋上を去っていく。彼らの背後でエッフェル塔の光が消える。
 なぜか感動しました。

 最後に響く一発の銃声。誰が死んだかは問題じゃない。僕だったら?引き金を引いていただろう。

1996/03/10