- 1956年日活 3/6東京国立フィルムセンター
- 監督:中平康 脚本:新藤兼人
- 撮影:中尾駿一郎
- 主演:牧眞介/天路圭子/南寿美子
東京国立フィルムセンターの「1950年代の青空と太陽」特集に行ってきました。
日本映画に清新な風を吹かせた大映の増村保造と日活の中平康監督の特集です。
きょう観たのは中平康監督の1956年の作品で、彼の初監督作品です。
画面一杯に広がる目。
その目がさらに拡大され、画面は黒色になりその黒色を通り抜けるようにしてビルの屋上から捉えた東京の街並みのショットに切り換わる。
カメラはパンして銀座四丁目の服部ビルを捉え、やがて七丁目辺りの路地裏で止まる。
路地裏がズームインされる。
その路地裏のクレーンショットが続く。
カメラが上から下に移動する。娘が明るく鼻歌を歌いながら美容院に入っていく。
悲鳴。
渦巻が回転する美容院の看板のクローズアップ。
冒頭から才気が迸るような映画話法でなるほどなあと思いました。
フランスのヌーヴェル・ヴァーグの作家たちが注目したのも首肯けます。
あと印象的だったのはビルとビルの狭く暗い路地での乱闘です。
闇の中で男たちが暴力をふるっている。流れるのはモダンジャズ。かっこいいなあと思いました。
ドラムを叩いているのがフランキー堺でシンプルで安定したドラムを聴かせてくれます。
刑事役が内藤武敏で当り前ですが本当に若々しい。彼は端正な顔立ちでクールな刑事役にぴったりでした。
銀座にはあの頃川が流れていたんだというのも、なんだか感激しました。あの頃川が流れていたのは一丁目と八丁目辺りですね。
最後は冒頭と同じショットです。
路地裏。娘が明るく鼻歌を歌いながら美容院に入っていく。
悲鳴。渦巻が回転する美容院の看板のクローズアップ。
でも今度は死体は飛びださず、痴話喧嘩が飛びだし、映画は明るく終わるのでした。
1996/03/06