- 1994年アメリカ映画
- 監督/脚本:ハル・ハートリー
- 撮影:マイケル・スピラー
- 主演:イザベル・ユペール/マーティン・ドノバン/エレナ・レーベンソン
主人公のイザベル・ユペールは、尼院を飛び出した尼僧です。
最後には、尼院に戻ります。
この映画は、尼僧ユペールの「厳しい」外界での試練の映画だと見ることができると思います。
ユペールは最後まで、処女のままです。
最後の、尼院の場面では、ユペールは、幼子イエスを抱いた聖母マリアの絵をバックに撮られます。
「あなたは、この人を知っているのですか?」という問い掛けに、はっきりと「知っています。」と答える、マーティン・ドノバンを抱いたユペールには、聖母マリアのイメージが重なります。
この答えは、とりわけ印象的です。
何度も作中で、'I don't know.'と答えるユペールですが、ここだけでは、悲しみの涙を流しながら、はっきりと「知っています。」と答えるのです。
そこには、忌まわしい過去を持つドノバンをその過去のまま愛そうとするユペールの意志があります。
もっと一般化するならば、人間をその邪悪な面も含めて、愛していこうとするユペールの決意があります。
そして、ラスト・シーンには、ハル・ハートリー監督の道徳的潔癖さが現われています。
悪を犯したものは、その責任を取らなければならない。
この映画は、ハル・ハートリー監督が彼の宗教面、道徳面を見せた映画だと思います。
そして、この映画は、アマチュアの尼僧ユペールが本物の尼僧になる成長の物語だと思います。
背中を見せて、ドノバンがユペールに'I'm sorry.'と言うシーンが心に残りました。
1994/12/23