- 1967年東宝映画 4/26NFC
- 監督:小林正樹 脚本:橋本忍
- 撮影:山田一夫 音楽:武満徹
- 出演:三船敏郎/司葉子/加藤剛
オープニング・ロールの直線を主体にした映像がこの映画全体を支配する緊張感を生み出しもし、予告もしている。
冒頭は剣と剣客のテンションの高いクロース・アップ。焦点距離が浅いのでどちらかにフォーカスするとどちらが消える。
でも息詰まるような緊張感の中で切られるのはたんなるわら人形なのだ。
笑いの無い滑稽さ。
なぜならこの滑稽さはやり切れなさに繋がるからだ。
剣客は組織の一員として生きている。
彼は組織の中で生きるために自分を抑えて生きている。彼は卑屈にさえ見える。
パンフレットではその彼が組織の理不尽さに遂に怒りを爆発させるという意味のことが書いてあるがそれは違うと僕は感じる。
彼はある出会いによって本来の剣客になるのだ。
彼は一人の女性と出会う。
彼女は自分の意志をたとえ殺されようとも貫き通す凛とした強さを持っている。
その強さが彼を組織の一員から開放し、本来の存在に戻すのだ。
僕にはこの女性こそが主人公のように思える。
抑制の利いた人格の持ち主であるこの女性は真の強さを持っている。
自分が本当に大切だと感じることに関してはけっして自分の意志を曲げない。
ここにあるのは厳粛な美しさであり、僕はそれになによりも心を動かされた。
2000/04/26