- 1995年フランス映画 10/13シネ・ヴィヴァン・六本木
- 監督/脚本:ブノワ・ジャコ
- 撮影:カロリーヌ・シャンブティエ
- 出演:ヴィルジニー・ルドワイヤン/ブノワ・マジメル/ドミニク・ヴァラディエ
夜明けのパリから映画は始まる。
ヴィルジニー・ルドワイヤンがパリの街を足早に歩くときの靴音が耳に残る。
そして映画を観終わった時、ずっとヴィルジニー・ルドワイヤンが足早に歩いていたのを観ていたような印象が残る。
歩くということについと改めて考えてみた。
颯爽と歩く人もいれば、とぼとぼと歩く人もいる。
歩き方はいまその人が幸福なのかどうかということや心の動きを現している。
歩き方はその人の生き方を表現していると言ってもいいかもしれない。
ヴィルジニー・ルドワイヤンは真っ直ぐに歩く。ゆったりとは歩かない。
何かに挑戦するように突っ切るようにして足早に歩く。
顔はしっかりと前に上げている。顔の表情はけっして媚を作らない。
戦場に臨む兵士のようだと表現したら大げさかもしれないが、顔は人を冷たく拒んでいる。
目が顔の表情を裏切っていると言ったらいいだろうか、目は活発に動き世界に対する好奇心を示している。
ヴィルジニー・ルドワイヤンが歩くのを観ていると、「シングル・ガール」の主人公の生き方がくっきりと浮かび上がってくる。
誰にも頼らずひとりで強く生き、生を精一杯楽しむ。
そんな生き方は言葉にしてしまえば手垢にまみれありふれているが、靴音に耳を澄ませるとその生き方がダイレクトに伝わってきて心を動かされ、力なく喫茶店の椅子の中に崩れる恋人を見下ろし見限るときのヴィルジニー・ルドワイヤンの凛々しさが浮かんでくる。
映画を観終わった後、六本木の街をヴィルジニー・ルドワイヤンのように歩いてみた。
勇気が湧き、世界が少しだけ輝いて見えた。
1997/10/13