2016/03/16

美わしき歳月


  • 1955年松竹映画 4/19NFC
  • 監督:小林正樹 脚本:松山善三
  • 撮影:森田俊保 美術:平高主計
  • 出演:木村巧/佐田啓二/久我美子


 タイトル・ロールのバックに流れるジャズ・ドラムの音。それはモダンな印象を与えるというよりは、不安を醸しだす。
 それに対応するかのようにオープニングは車の車窓からの事故を予感させるような映像が映し出される。
 そしてこの映画の重要な視点となる老人と老婆が登場する。

 中学の親友である4人の同級生たち。一人は戦死し、一人は工場労働者として働き、一人はキャバレーでドラムを叩き、一人は医師でありながらその理想主義故に職を失っている。
 4人はそれぞれ夢を持っていたが、戦後の経済不況の中、失意の日々を送っている。

 小林監督は4人の若者たちをけっして観念的でなく、実生活の中に置きながら描写し、その描写を通して戦後間もない日本の在り様を捉えようとしている。

 先に老人と老婆が重要な視点となると記したが、NFCのチラシでも指摘されているように、この二人がいることによって、その戦後の日本像は若者だけでなく、老人を通したイメージも得て豊かなものになっている。

 この映画は一種のハッピー・エンドで終わるが、それ故にこの映画を浅薄だと評する人がもしいるなら、その人は完全に間違っている。
 なぜならば映画とは論文でなく、生への戦いへと人々を促すものだからだ。

 この映画において小林監督は「戦後日本」という題の論文を書こうとしているのではなく、戦後日本をリアリステッィクに捉えながら、生のあり方を模索しているのだ。

 絶望するのでなく、模索するという点において、この映画は明るさを得て、その明るさがハッピー・エンドをもたらすのだ。

2000/04/19