2016/03/14

愛撫(ラムール)


  • 1933年松竹キネマ
  • 監督:五所平之助
  • 撮影:小原譲治 脚本:伏見晃
  • 主演:岡田嘉子/新井淳/渡辺忠夫

※写真は五所平之助

 東京国立フィルムセンター「日本映画史ー無声映画の時代」特集です。

 脚本が伏見晃。
 小津が短編喜劇(「引越し夫婦」「若き日」等)を作っていたときの名コンビです。2人は「生まれてはみたけれど」で袂を分かちます。
 この映画の監督の五所平之介とのコンビでも有名です(「伊豆の踊子」「人生のお荷物」等)。

 若々しい飯田蝶子を観れたのがなにより嬉しいことでした。
 この映画は1933年の制作ですから飯田は36歳位ですね。この時期のコメディエンヌとしては一番好きな人です。戦前の小津映画にはなくてはならない人でした。

 坂本武も出演しています。
 翌年制作された小津の「浮雲物語」では飯田と印象的な演技を観せてくれていますね。
 坂本はこの時期の松竹の喜劇にはほとんど出演しているのではないでしょうか。
 五所監督の代表作と言える「煙突の見える場所」にも出演しています。

 題名のもたらすイメージと映画の内容がこれほど離れている映画も珍しいのではないでしょうか。
 それでいて映画を見終わるとこの題名がぴったりだと思われてしまうのです。

 父親と息子の関係をテーマにした映画です。
 風にそよぐ木が印象的でした。光と風がこの映画を爽やかなものにしています。

 厳格な父親は自分のことを理解してくれない。息子は父親の愛情を受けることができず、酒に溺れます。そんな息子の生活を知った父親はショックで倒れますが、自分は本当に息子を理解しようとしたことがあったかと深く反省します。

 見舞いに帰郷した息子の手を優しく「愛撫」しながら、父親は息子に謝るのでした。

 それにしても風と木と光とが印象的でした。
 清々しいという表現がぴったりの映像でした。

1996/05/15