2016/03/08

クリムゾン・リバー


  • 2000年フランス映画 2/5日比谷スカラ座
  • 監督/脚本:マチュー・カソヴィッツ
  • 撮影:ティエリー・アルボガスト
  • 出演:ジャン・レノ/ヴァンサン・カッセル/ナディア・ファレス


 一言で言うならば、フランス製ハリウッド映画。

 僕は職人芸的カメラ・ワークに特にそれを感じた。内容空疎な物語をいかにももったいぶって語っているのが、憐れみさえ感じる。マチュー・カソヴィッツ監督はそのような監督ではけっしてなかったはずだ。僕は大いに失望した。
 エンタテインメントを撮ろうとして、このような映画を作り出したとしたなら、彼はエンタテインメントを根本から誤解している。

 たぶんアメリカ文化というものをフランス人は理解できないのだ。

 マチュー・カソヴィッツはアメリカ文化を一段下のものと思っているのではないだろうか。この映画からなんとなく監督の意図が伝わってくるのだが、その意図とは「芸術的」ハリウッド映画を撮ってやろうという意図だ。ここには、例えばジャン=リュック・ゴダールにあるような、アメリカ映画に対する敬愛の念は微塵も無い。

 ハリウッド映画とアメリカ映画はけっして等号で結ぶことはできないが、誤解を恐れずに言えば、アメリカ映画が世界中の人々から愛されているのは、アメリカ映画が子供っぽいからなのだ。子供的であるが故にアメリカ映画、特にハリウッド映画は世界に広まっていった。
 子供的ということは改めて論じるべきことなのだが、とりあえずその結論を受け入れてもらえば、アメリカ映画であるハリウッド映画に「芸術的」という形容詞は水と油のように馴染むべくもないことが分かるだろう。
 「芸術的」ハリウッド映画を撮ろうとした時、既にこの映画は失敗している。

 唯一子供っぽいのが犯人の動機、或いは動機の弱さというのもこの映画の駄目さ加減を象徴している。

 こんな映画面白がっちゃ駄目だぜ!

 蛇足だが、マチュー・カソヴィッツはとても才能ある監督だ。だからこそこんな辛口の感想になった。

2001/02/05